2026.8.17
「自分らしさ」を求めて、子育てをきっかけに日系企業から外資系ベンチャーへ。「もっとできるかも」から始まったキャリアの再設計|岩尾文佳さん
著者:加藤愛子

「子どもが生まれたら、仕事は少しセーブするもの。」
そんな空気がまだ感じられることをみなさんもご経験されたことがあるかもしれません。
今回のトモバタでは、二人の子どもを育てながら、日系大手企業から外資系ベンチャーへ転職し、自分らしい働き方を見つけた岩尾文佳さんにお話を伺いました。
文佳さんのお話で印象的だったのは、転職の理由が「もっと稼ぎたい」「キャリアアップしたい」というものではなく、「もっと自分らしく働きたい」という、とてもシンプルな想いだったことです。
「もっとできるかもしれない」という気づき
一人目のお子さんが生まれた後、文佳さんは時短勤務を活用しながら働いていました。
福利厚生も充実しており、子育てとの両立もしやすい環境。それでも、心のどこかには小さな違和感がありました。
限られた時間の中で効率よく成果を出しても、評価されるのは「働いた時間」。
「成果で評価されたい。」
その気持ちはずっと心の中にありました。
そして二人目の育休中、少し余裕ができたことで、自分自身と向き合う時間が生まれます。
「思ったより子育てにも慣れてきた。」
「もしかしたら、私はもっと働けるかもしれない。」
その小さな気づきが、転職という大きな決断につながりました。
家庭で感じていた"上司"という違和感
今回のお話の中でも特に印象的だったのは、ご夫婦の役割分担についてです。
以前は、家事や育児のほとんどを文佳さんが管理し、
「これお願い。」
「あれやっておいて。」
と、ご主人に細かく指示を出していたそうです。
振り返ると、自分は家庭の"上司"になっていた。親になったタイミングは同じなのに、なぜ自分だけが全体を把握し、管理し、指示を出す立場なのだろう。
そんなモヤモヤを抱えながら過ごしていたといいます。
そこで始めたのが、「丸ごと任せる」ということでした。
保育園関連は全部夫に任せる。
朝食づくりも、献立を考えるところから任せる。
一つひとつのタスクをお願いするのではなく、一つの領域を最初から最後まで任せる。
最初は、自分でやった方が早いし、うまくできる。
それでも手を出さずに任せ続けたことで、ご主人も全体像を理解し、自分で考え、判断し、動くようになっていったそうです。
その結果、夫婦の関係も「上司と部下」のような関係から、「対等なパートナー」へと変わっていきました。
仕事で言えば、タスクだけを渡すのではなく、プロジェクトごと任せるのと同じ。
家庭も組織も、相手を信頼して任せることで、人は成長し、関係性も変わっていくのだと改めて感じさせられました。
「働いている自分」が一番自分らしかった
文佳さんは、二人目のお子さんの育休中、約2年間専業主婦として過ごした時期がありました。
その時間を通じて気づいたことがあります。
「家庭のことが嫌だったわけではない。でも、社会とのつながりがなくなった時、自分らしくいられなくなった。」
料理が大好きなわけでもない。
家事を極めたいわけでもない。
だからこそ、
「働いている自分が、一番私らしい。」
この言葉は、多くの働くママにとって、大きな共感を呼ぶのではないでしょうか。「仕事をすること」と「子どもを大切にすること」は、決して対立するものではありません。自分らしくいられる場所を持つことが、結果として家族にも良い影響を与える。
キャリアは、一歩ずつ積み重ねればいい
最後に文佳さんが話してくださったのは、「壮大なキャリアプランはない」という言葉でした。
「その時にできることを続けていけば、キャリアは自然とつながっていく。」
将来の正解が見えなくてもいい。
ロールモデルが一人いなくてもいい。
その時々で、自分が共感できる人の良いところを少しずつ取り入れながら、自分らしい働き方をつくっていけばいい。
自分の違和感を見過ごさないこと。
そして、その違和感に向き合い、小さくても行動してみること。
文佳さんのキャリアは、そんな一歩一歩の積み重ねでできていました。
働き方も、家族との関係も、自分らしさも、一度で完成するものではありません。
だからこそ、今感じているモヤモヤも、自分らしい人生をデザインするための大切なサインなのかもしれません。
【ゲストプロフィール】岩尾文佳
秋田出身、二児の母。大学でアラビア語を学び、卒業後は日系物流企業で航空・海上貨物の輸入業務に従事。2人目を出産後、外資IT企業であるHouzz Japanに転職、カスタマーサクセスマネージャーとして勤務。※2023年6月22日収録時